先日、映画『ロストケア』を観てきました。
柄本明さんの迫真の演技に号泣……良い映画だったなぁ。
それはさておき、映画を観て「一人で親を介護するのがつらい」とお悩みの方は多いんだろうなぁと再認識させられたわけです。
そんな方々へ向けて、どうしても伝えたいことがあります。
「親の介護もう嫌だ……」と思うのは、必ずしも悪いことではありません。
そう思っても仕方ないほど、介護の現実は過酷なものですから。
親子共倒れになってしまう前に、遠慮なく国の支援制度を活用しましょう。
今回は『親の介護が嫌だと思ってしまう理由』『親の介護が嫌だという悩みを克服する方法』『介護に関する国の支援制度』について解説していきます。
この記事を読めば、親の介護を一人で抱え込まないための手がかりが見つかるはずです。
親の介護が嫌だと思ってしまう理由
まずは親の介護が嫌だと思ってしまう理由を知っておきましょう。
親の介護が嫌になる主な理由としては、次の4つが挙げられます。
- 精神的・身体的負担
- 経済的負担
- 自己犠牲の感情
- 家族間の摩擦
ひとつずつ詳しく解説していきます。
精神的・身体的負担:ストレスや疲労が増大
親の介護により、ストレスや疲労を感じることが多くなります。
「親の介護ってどうやればいいの?」といった予備知識を得る前に、親の介護は突然やってきます。
認知症の対応や排せつ・食事・入浴といった身体的な介護は、介護の知識なしでは難しいでしょう。
また自分の知っている親ではなくなっていくような感覚に、精神的なストレスを抱える方も少なくありません。
ほかにも認知症からくる昼夜逆転や夜間のオムツ交換などにより、家族の睡眠時間が確保できなくなると疲れは溜まっていく一方です。
これらの精神的・身体的な負担により、親の介護が嫌になってしまいます。
経済的負担:介護費用の負担や収入の減少
親の介護には介護サービスや介護用品などの費用がかかります。
また若い人とは違って、加齢に抗えない高齢者の介護度は、悪くなることはあっても良くなることはないでしょう。
一人にできないほど介護が必要になってくると、家族が働く時間を減らしてまで介護しなければなりません。
働けなければ収入は減少して、さらに家計が苦しくなります。
このような経済的負担の悪循環が、親の介護が嫌になってしまう原因の一つです。
自己犠牲の感情:自由時間やキャリアの断念
親の介護は育児同様、24時間365日体制で対応しなければなりません。
親の介護に多くの時間を割くことで、自分の趣味に興じる自由な時間が減ります。
また親の介護のために仕事を休んだり、退職を余儀なくされたりといったケースも少なくありません。
自分の人生が犠牲になっていると感じることで「もう親の介護は嫌だ!」という感情が生まれてしまいます。
家族間の摩擦:介護負担の分担や価値観の違い
親の介護をしていると、家族間での介護負担の分担や価値観の違いが問題となることがあります。
例えば兄弟間での介護負担が偏ったり、親の介護方針に対する意見の食い違いがあったり、兄弟の揉め事が以前より増えたと感じる方も多いようです。
このような家族間の摩擦が、親の介護への抵抗感を強める要因となります。
親の介護が嫌だという悩みを克服する4つの方法
親の介護に対する悩みを克服するために、次の4つの方法を試してみましょう。
- 介護のプロに相談する
- 介護の知識・スキルを身につける
- 家族で協力体制を築く
- 必要に応じて家族も治療を受ける
上記全てに共通するのは『一人で抱え込まないこと』です。
では、それぞれ解説していきましょう。
介護のプロに相談する
もし家族だけは親の介護が難しいと感じたことがあるのなら、なるべく早めに介護サービスや施設の活用を検討しましょう。
経済状況や必要な介護に適した介護サービスを利用すれば、時間のゆとりも生まれ、体やメンタルを休められます。
介護のプロは介護の辛さもよく知っています。
そんな介護のプロに相談すれば、心身の負担を大幅に軽減できます。
まずは最寄りの地域包括支援センターや役所の福祉課などへ相談しましょう。
介護の知識・スキルを身につける
介護に関する情報を集めて、基本的な介護技術を習得してみましょう。
介護の基礎知識やスキルを身につけることで、介護への抵抗感を軽減できます。
例えば、スマホで動画サイトを検索するだけでも、介護のやり方をわかりやすく説明している動画がたくさん見つかります。
訪問介護を利用しているのであれば、ヘルパーに介護の悩みを相談するのもいいでしょう。
親の状態に適した介護方法を実践できるようになれば、身体的な負担も軽減され、結果として親の介護への抵抗感が和らぎます。
家族で協力体制を築く
費用負担の分担や役割分担を決めましょう。
たった一人で親の介護をしていると、精神的・身体的・経済的な負担が大きくなってしまいます。
家族全員で協力し、お互いの負担を軽減することが重要です。
例えば、次のような役割分担ができないか家族で話し合ってみましょう。
- 遠方に住んでいるため直接的な介護が難しいなら経済的な援助を担当する
- 同居・近隣に住んでいるなら直接的な介護を担当して経済的負担を減らす
- 仕事が忙しく介護に関われないなら経済的な負担を増やす
それぞれが得意な部分を担当すれば、一人に負担が集中しない介護は実現可能です。
一人に任せっきりにしないためにも、定期的に家族間で情報共有や相談しあいましょう。
必要に応じて家族も治療を受ける
もし介護する家族に睡眠障害や食欲不振などの異常が認められる場合は、早急に病院を受診すべきです。
介護のストレスや疲労が溜まることで精神的に不安定になり、うつ症状を訴えるケースも少なくありません。
医師のカウンセリングを受ければ自分の気持ちが整理でき、不安感が軽減されます。
また投薬治療を受ければ睡眠や食事が普段どおり摂れるようになるでしょう。
体力が落ちていると、良くないことばかり考えてしまいがちです。
体力が回復すれば、親の介護に向き合える精神状態に戻れます。
親のケアだけでなく、家族自身のケアも忘れないでください。
遠慮なく国の支援制度を活用しよう
「親の介護もう嫌だ!」と思ったら、遠慮なく国の支援制度を活用しましょう。
民法では「子供には親の扶養義務がある」とありますが、同時に「扶養義務は自分の生活を脅かしてまで負う必要はない」とも言っています。
事実、日本には親の介護が難しくなった家族をサポートする支援制度があります。
国が認めたことですので「親の介護を放棄してしまった」と悩む必要はありません。
ここからは介護保険制度・介護休暇制度・地域包括支援センターについて簡単に解説していきます。
参考:e-GOV法令検索『民法』
介護保険制度の活用
介護保険制度は、高齢者が安心して必要な介護サービスを受けられるための制度です。
介護保険制度で受けられる介護サービスには、次の3つがあります。
- 居宅サービス
- 地域密着型サービス
- 施設サービス
家族だけで介護が難しい場合は、訪問介護・老人ホーム・デイサービスなどを積極的に利用しましょう。
老人ホームに親を入れることは、決して悪いことではありません。
「親の介護は子供の役目だ」と抱え込まず、無理を感じたら他者を頼りましょう。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター『公的介護保険で受けられるサービスの内容は?』
介護休暇制度を使う
仕事と介護の両立をしたいときは、介護休暇制度の利用も検討しましょう。
介護休暇制度は、働く介護者が短期間の休暇を取得して介護に専念できるようサポートする制度です。
病院の付き添いや介護サービスの手続きなどでも介護休暇がとれます。
休みがとれる日数は、介護が必要な家族1人につき年5日です。
長期の休暇はとれませんが会社の有給休暇とは別に休めるので、組み合わせれば介護離職せずに済むかもしれません。
参考:厚生労働省『「介護休暇」を活用しましょう。』
地域包括支援センターを活用
地域包括支援センターは、介護に関する相談や情報提供のための窓口です。
相談者の悩みに応じた支援策を提案してくれるため、介護に関する悩みや問題を解決する手助けとなるでしょう。
また上記で解説した介護保険制度や介護休暇制度を利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定の手続き方法についても地域包括支援センターで相談可能です。
地域包括支援センターの場所は、下記リンク先の厚生労働省ホームページにも掲載されています。
または市町村役所の介護保険担当窓口でも教えてもらえるので、一度相談に行ってみましょう。
参考:厚生労働省『地域包括ケアシステム』
親の介護が嫌だと感じる気持ちを否定しない【まとめ】
では今回のまとめです。
- 「親の介護が嫌だ……」と思うのは必ずしも悪いことではない
- 介護は精神的・身体的・経済的に大きな負担となり、介護者の人生すら犠牲にしてしまう
- 親の介護に対する抵抗感を克服するためには、罪悪感なく国の支援制度を活用して介護のプロに助けてもらう
つらい介護の終わりが見えずに、この先どうなるのか不安に思うのは当然のことです。
自分を否定せず、まずは最寄りの地域包括支援センターや役所の介護保険担当部署へ相談しに行きましょう。
親の人生だけではなく、自分の人生も大切にしてください。
子供が幸せでいることは親の幸せでもありますから。
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