ただでさえアラフォーの転職ってすごく勇気がいるのに、介護への転職となるとなおさら不安ですよね。
介護の仕事を始める前は、ほかの業種にはない独特の不安があります。
実際、僕もアラフォーで介護に転職することを考えた時は、自分にできるのかとても不安でした。
なぜなら「介護だけは自分には絶対できない」と頑なに避けてきた仕事だからです。
介護を始める前に実際の業務内容が詳しくわかっていたら不安も少なかったんじゃないかなと思い、現役でユニット型特養に勤務する介護福祉士の目線から、実際に行われている業務内容について詳しく説明していきますので、介護に転職をお考えの方、特に特養での勤務を考えている方は是非参考にしてください。
介護の業務内容は主に7つ
介護の業務は想像以上にたくさんやることがあります。
正直、おじいちゃんおばあちゃんの話し相手になるだけの仕事だと思って始めると、すぐ辞めることになりますので、そこは腹をくくっておいてください。
ユニット型の特別養護老人ホームで、今実際に行っている業務内容は主に以下の7つです。
- 排泄介助
- 食事介助
- 入浴介助
- 服薬介助
- お茶出しやリネン交換など家事的な業務
- 利用者とのコミュニケーション
- レクリエーション
もちろん施設によって細かい違いこそありますが、基本的な部分は変わりません。
それでは一つずつ詳しく説明していきます。
排泄介助
排泄介助と聞いて、多くの人が真っ先にイメージするのはやはりオムツ交換でしょう。
オムツ交換では、ただオムツを替えるだけではなく褥瘡(床ずれ)の有無をチェックしたり、もし褥瘡が発生している場合は軽快しているのか悪化しているのかを観察します。
また、一日一回は陰部洗浄を行い、尿路感染などを予防するために陰部を清潔に保ちます。
オムツやパットの当て方が悪いと失禁したり、褥瘡の原因になったりするので、コツをつかむまでは少し大変かもしれません。
そしてなによりオムツ交換は冬でも汗をかくくらい体力を使う業務です。(笑)
日勤帯は人が多いので一人でやることは少ないですが、夜勤だと一人で何十人もオムツ交換をすることもあり体力勝負になってきます。
オムツ交換以外にもトイレへ誘導してズボンや下着の上げ下げを介助したり、汚れていればリハビリパンツを交換することも。
また、ストマ(人工肛門)の利用者にはパウチ内の便を破棄したり、必要があればストマの交換も行います。
ポータブルトイレや尿器を使用している利用者がいれば、破棄や清掃、消毒。
利用者がもし失禁していれば、衣類の更衣やシーツ交換など、排泄介助に付随する業務はたくさんあります。
もしかしたら便や尿の処理をすることに抵抗がある人も多いかもしれませんが、それも最初のうちだけなので安心してください。
どうしてもオムツ交換が無理で辞めていった人を今のところ見たことがないので、ほとんどの人がすぐに慣れると思いますよ。
食事介助
食事介助では主に、自力で食べられない利用者の食事を介助します。
自力で食べられない原因は、認知症だったり、まひだったり様々ですが、いずれにしろ利用者のペースに合わせて介助するのが大切です。
「利用者のペースに合わせて」というと、なんだか少し難しそうですが、「もし自分がこんなふうに食べ物を口に入れられたらどう思うか」という視点で見ると難しいことではありません。
実際の現場では食事の時間も決まっているし、1人だけを介助するわけではないので食事時は慌ただしく職員側のペースで介助してしまいがちですが、できる限り利用者のペースに合わせて介助しないと誤嚥のリスクが高くなり事故につながります。
高齢者は嚥下機能が低下しているので、最悪の場合、食事を詰まらせて亡くなってしまったという事故もあります。
食事介助は生命にも関わる重要な業務です。
また、ときには利用者が食べたくないと訴えることもあります。
そんな時はまず上手く声かけをしながら促すのが鉄則ですが、無理に食べさせるのは避けたいところです。
現場ではたまに「1時間や2時間は粘って食べさせて!」と指示されることもありますが、利用者がなぜ食べられないのか理由をはっきりさせることが最優先ではないでしょうか。
我々でも食べたくない時ってありますよね?
もしあなたが、食べたくないのに何時間もかけて口に食べ物を入れ続けられたら、どう思いますか?
利用者が食べられない原因を見極めて適切な対応をしたいものです。
食事の時間は楽しく過ごしてもらいたいですよね。
入浴介助
施設における入浴介助は、利用者のADL(立てるか?歩けるか?寝たきりか?)に合わせてリフトやストレッチャー、チェアを使う機械浴を使用することが多いです。
入浴前には必ずバイタルを測定して異常がないか確認します。
ユニットケアでは基本的に1人の職員が1人の利用者を担当することが多いので、居室から浴室へ誘導するところから始まります。
中には入浴を拒否する利用者もいます。
食事介助の時と同じく、入浴拒否もやはり「なぜ拒否するのか?」という理由を把握することが大切です。
声かけの仕方を変えてみたり、職員を変えてみたり、入浴の順番を変えて時間を空けてみたりと臨機応変な対応が必要になってきます。
浴室内では、とにかくリスクが多い場所での業務になるので細心の注意を払いましょう。
濡れた床の上で移乗をすることも多いし、機械浴は可動部が多くケガの可能性もあります。
お湯の温度は熱くても冷たくても事故につながります。
特に浴室内での転倒事故は、実際の現場でも多いので要注意です。
また、お風呂の中では、無理をしない範囲で利用者にできるところはやってもらうようにします。
ユニット型では、一日に入浴介助しなければならない利用者が10〜20名程います。
もちろんお風呂の時間も決まっているので忙しく、間に合わないときは早く終わらせたい気持ちから職員が必要以上に介助をしてしまいがちですが、できる限り利用者のペースに合わせて介助ができるようにスケジュールを組むのも大切です。
洗髪や洗身中は、全身をよく観察して褥瘡やアザなどはないか皮膚状態のチェックもします。
更衣では、まひや拘縮のある利用者もいますので、状態に合った方法で脱着する必要があります。
もちろん衣類の洗濯や、最後には浴室の清掃なども行うので、入浴介助も体力を使う業務の一つです。
特に夏場の入浴介助は、水分補給をしっかりしないと職員の体調にも関わります。
入浴介助は介護の業務内容でも一二を争う重労働ですが、基本的には連日入浴介助をすることは少ないです。
入浴介助はリスクの多い場所で体力を使う介助を行うので、精神的にも身体的にも負担の大きい業務です。
服薬介助
高齢者は想像以上に薬を飲んでいます。
毎日1回は何かしらの薬を飲んでいる人が大多数です。
多い人だと1日3回に加え眠前薬を飲んでいる人もいます。
服薬介助は、ナース(Ns)との連携で行われます。
基本的に、誰にどの薬を飲ませるかなど薬の管理はNsの業務です。
Nsから渡された薬を、間違いなく本人が服薬できるように介助するのが我々、介護職の業務になってきます。
1人の利用者に服薬介助するのであれば、さほど難しい業務ではありませんが、ユニット型特養であれば2ユニット20人の服薬介助をすることになるので、非常に注意が必要です。
違う人の薬を飲ませてしまったり、朝食や昼食、夕食、寝る前など飲むタイミングを間違えて服薬させてしまうことを誤薬といいます。
もし誤薬をしてしまうと、かなり危険な状態に陥る可能性もあるので、絶対に誤薬が起こりえないマニュアルを作り込み、介助の際はマニュアルを徹底することが重要になってきます。
お茶出しやリネン交換など家事的な業務
朝食と昼食の間、おやつの時間などにお茶やコーヒーを出したり、コップを洗ったりすることも介護職の業務です。
お茶出しは一見地味な業務ですが、水分補給の意味もあるので重要な業務です。
利用者がむせ込まないように適切なトロミをつけることも、誤嚥のリスクを減らすために重要になってきます。
また、週に1度のペースでベッドのシーツ交換も行います。
ユニット型特養であれば、1人で一日に3〜5床ほどのシーツ交換をします。
掃除に関しては清掃業者が入る施設が多いですが、利用者は24時間生活しているので必要に応じて床やトイレの掃除をしたり、テーブルを消毒したりします。
特に最近では、新型コロナウイルスの影響もあり今まで以上に消毒を丁寧に行い、環境の清潔保持を徹底している施設が多いです。
高齢者は体力が低下して抵抗力も弱いので感染症予防の観点からも、これらの家事的な業務は安易に捉えることなく、気を引き締めて行うべき重要な業務です。
利用者とのコミュニケーション
ユニット型特養では2ユニット20名の利用者を見ることになるので、ゆっくり利用者とコミュニケーションをとれる時間はかなり限られてきます。
ユニットごとで利用者の認知症やADLの程度によっても変わってきますが、今実際に僕が利用者とゆっくりコミュニケーションをとれるのは1日のうちで合計1時間あれば良い方です。
しかし、業務に追われ忙しい中でも空いた時間があれば利用者に声をかけ、雑談したり一緒にテレビを見たりすることは大切なことです。
例えばテレビを見ながら「子供はかわいいねぇ」と寂しそうに話していれば、最近コロナ禍の影響で家族と面会できていないから寂しいのではないかと推測できます。
「○○が食べたい」「最近夜寝るときに寒くて」という発言があれば、可能であれば家族に依頼して食べ物や毛布をもってきてもらうことができるかもしれません。
利用者は我々の想像以上に遠慮しているものなので、こちらから話しかけていくうちに潜在的なニーズが見えてくることもあります。
また会話をすることで「怒りっぽい」「意欲がない」「徘徊」といった認知症のBPSD(周辺症状)を落ち着かせることができたりします。
利用者とのコミュニケーションは、職員の単なる暇つぶしではなく、ケアのヒントを得るという大切な業務でもあるので、ちょっと様子がいつもと違う利用者がいたら積極的に話しかけてみてください。
レクリエーション
日常的にちょっとしたゲームをしたり、体操をしたりすることもレクリエーションの一環ですが、施設では夏祭りやクリスマスなど季節感のあるイベントを定期的に行うこともあります。
特養の利用者は、ほとんど外出することなく四六時中施設の中にいるので、時間感覚が鈍くなるうえに毎日が同じことの繰り返しで生活にハリがなくなってくるんです。
たまには外食に出かけてみたり、職員と一緒に料理をしたりするレクリエーションを行うことで、時間感覚を取り戻してもらったり、元気を出してもらいQOL(生活の質)の向上を図ります。
我々も同じ場所で何もしないで何日も居れば、当然飽きてきますよね。
それを考えればレクリエーションが重要な業務内容であることは想像に難くないはずです。
そして、施設を挙げて行うイベントは、委員会を設置して何度も話し合いながら計画的に行うことになるので、実行までそれなりに大変ではありますがイベントが成功したときの達成感は、この仕事にやりがいを感じることができるでしょう。
ただ、コロナ禍の影響で大々的な施設全体でのレクは難しくなってきましたね・・・。
これからのレクリエーションは今まで以上に工夫が必要になってくるでしょう。
介護の業務って実は奥が深い
ここまでを読んでいただければ、介護の業務はただ高齢者と楽しくお話をするだけではなく、利用者の健康管理や生活の質の向上など、やるべきことがたくさんあるのがおわかりいただけたことでしょう。
時には、利用者の生命に関わるような責任重大な業務もあります。
例えば、看取りですね。
正確には、Nsが24時間常駐しない特養では看取りはできませんが、医療職がいない分、介護職が救急搬送まで適切な対応をとる必要があります。
介護は高齢者を相手にしている以上、人の最期に立ち会うことも多い仕事です。
また、医療職まではいかないものの、介護職でも必要最低限の医療的な知識や技術などが求められます。
近年では喀痰吸引や経管栄養も、必要な研修を受けることで介護職でも行えるようになってきました。
医療的ケアはもちろんですが、介護の業務は利用者の抱える様々なリスクを回避できるように「常に考えながら」行います。
介護職員初任者研修で学ぶ「リスクマネジメント」は、決して難しいことではなく常識的に考えればわかるようなことがほとんどです。
アラフォーをはじめとする人生経験豊富なミドル世代は、責任感や社会常識も備えている人が多いので、介護業界では頼りになる存在なんです。
アラフォーなら介護の業務内容のほとんどはこなせます。
アラフォーを含む、30代後半〜50代前半のいわゆるミドル世代で、初めて仕事に就くという人はまずいないでしょう。
実際に、現在介護の現場で活躍するミドル世代をみても、新卒からずっと介護をやっているという人は少数派です。
ほとんどが、全く違う職種から介護へ転職してきた人たちです。
介護の業務の良いところは、前職がどんな仕事でも培ってきたスキルが無駄にならないところではないでしょうか。
例えば、前職が飲食業なら、お茶出しや食器洗いなどキッチン周りの業務が得意だったり、お客さんとのコミュニケーション経験も豊富でしょう。
介護は家事的な業務も多いし、言わずもがなコミュニケーション能力は必要不可欠です。
また、前職が営業職なら、人の表情を見ながら会話を組み立てたり、成約という「目的」にうまく誘導するコミュニケーションが得意だったりします。
対人支援の介護職においてコミュニケーションは必須スキルだし、利用者が言葉にできないニーズを探るためにも非言語コミュニケーションは特に重要です。
そして、前職が製造業なら、5Sや生産管理などをやってきているから、職場環境や利用者の生活環境を整理整頓したり、計画的に業務を遂行する意識が身についています。
介護の業務はすべてケアプランという計画に基づいて実践され、たくさんの利用者を見なければいけない施設では、日常的な業務は常に時間を見ながら段取り良く動くことが求められます。
ちなみに僕も、過去に製造業や営業を経験してきた転職組です。
たとえ転職経験が多い人でも、一つの会社で長年勤めてきた人でも、社会経験が豊富なことに変わりはありません。
介護の仕事では、今まで得てきた経験は、たとえどんな経験であっても無駄にはならないんです。
重要なのは「どうしたら自分の経験を生かすことができるのか」と考えられるかどうかです。
介護の現場では、あなたの得意なことを必ず生かすことができます。
ミドル世代ならではの豊富な人生経験を武器にして、共にこれからの介護を引っ張っていきましょう!
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