買い物をしていると、たまにレジでお金を払うことができない高齢者を見かけることがありませんか?
大体の場合、店員さんが財布からお金を出してあげて解決するようですが、店員さんからしても他人の財布からお金を出すのは心地良いものではないでしょう。
高齢になってくると老化や認知症の影響により、買い物をしたり、食事の準備をしたり、また家事や洗濯など、生活する上で必須な行動がだんだん難しくなってきます。
高齢者の買い物に関して悩まれている家族や介護職員は多いのではないでしょうか?
そこで、一つの解決策として「キャッシュレス決済」の導入を検討することをお勧めします。
数あるキャッシュレス決済の中でも、高齢者にはカード型電子マネーやプリペイドカードがベストです。
今回は「高齢者がキャッシュレス決済を使うための対策」や「キャッシュレス決済の特徴」について解説をしていきます。
高齢者の買い物や金銭の管理で悩んでいる方は是非参考にしてください。
高齢者にこそキャッシュレス決済が必要な理由
高齢者が現金を持たずに、キャッシュレス決済を導入したほうが良い理由として以下の5点があげられます。
- 計算ができなくなる。
- 金種がわからなくなる。
- 金銭の出納管理が難しくなってくる。
- 認知症の影響で同じものを何回も購入してしまう。
- 詐欺や盗難、紛失のリスクがある。
「買い物をする」という行為そのものは、手段的日常生活動作(IADL)とも呼ばれる高次の生活機能に分類されます。
認知症はもちろん、老化により計算能力が衰退してくることもあるため「小銭や札をいくら出すとおつりがいくら返ってくるのか」「そもそも足りるのか」といった暗算による判断が難しくなってきます。
また、今手持ちの金額がいくらあって、今日いくら使ったから、今月はあといくら残っているといった、金銭の収入や支出の管理も困難になります。
そして、認知症の影響により短期記憶が衰退し、同じものを何度も買ってしまうこともよく聞く話です。
なにより現金を持っていると、高齢者を狙った詐欺や盗難、もしくは本人が財布を忘れてきてしまうリスクも高くなります。
これらの理由から、高齢者は現金を持たない方が様々なリスクを回避することができ、現金払いよりもキャッシュレス決済を導入するほうがメリットが多いといえます。
キャッシュレス決済とは?
では、そもそもキャッシュレス決済ってどんなものなんでしょう?
ここ数年で様々なキャッシュレス決済が登場してきていますよね。
キャッシュレス決済の種類
キャッシュレス決済には主に以下の4つの種類があります。
- クレジットカード
- デビットカード
- 電子マネー
- QRコード
それぞれ「実物のカード」で決済する方法と「スマホ」で決済する方法があります。
ただし、QRコードでの決済だけはスマホのみ対応しています。
また、クレジットカードでは、あらかじめ金額をチャージして使用する「プリペイドカード」に対応しているものもあります。
精算方法は3種類
キャッシュレス決済の精算方法は以下の3種類があります。
- 前払い(プリペイド)
- 即時払い(リアルタイムペイ)
- 後払い(ポストペイ)
それぞれ解説をしていきます。
前払い
あらかじめチャージしておいた金額から決済時に差し引く方法です。
チャージ方法は様々で、店頭のレジで店員さんにチャージしてもらったり、コンビニのATMでチャージしたり、クレジットカードからチャージして使います。
当然、チャージ残高が足りなければ支払いができません。
主に「nanaco」や「Suica」などの電子マネーや、「au WALLETプリペイドカード」や「ソフトバンクカード」といったプリペイドカードは前払いで使用します。
ポイントが付くので現金払いよりも少しお得ですね。
即時払い
決済時に直接口座から差し引く方法です。
デビットカードが代表的です。
こちらも当然、口座残高が足りなければ支払いができません。
チャージするという1ステップを省略して口座から直接引き落とされるので、わかりやすい精算方法です。
しかし、分割払いやリボ払いができなかったり、携帯電話料金や生命保険料といった自動引き落としで利用できないケースもあったり、といった理由からクレジットカードに比べて利用者が少ないようです。
後払い
先に決済を行い、決められた日にお金を支払う方法です。
クレジットカードを思い浮かべてもらうとわかりやすいはずです。
クレジットカードから自動的にチャージされる、オートチャージ機能付き電子マネーも後払いということになります。
クレジットカードの利用限度額は何十万円という高額になることが多く、限度額の範囲内であれば買い物ができてしまうので、使いすぎには要注意です。
クレジットカードで自己破産する話もよく聞きますよね。
高齢者にキャッシュレス決済は難しい?
ここまでキャッシュレス決済について詳しくみてきましたが、種類も多くて知れば知るほどキャッシュレス決済ってなんだか小難しそう・・・と感じてしまいますよね。
たしかに、少し前の社会では高齢者がキャッシュレス決済を利用するのは難しかったかもしれません。
しかし、最近ではキャッシュレス決済も随分普及してきました。
それに、キャッシュレス決済の種類も豊富になってきたということは、適切なものを選べば高齢者でも使えるということです。
もちろん我々がサポートする必要はありますが、高齢者がキャッシュレス決済を利用するのは、それほど非現実的なものでもなさそうです。
キャッシュレス決済社会が急加速している
コロナ禍の影響もありキャッシュレス決済は急加速で社会に浸透し、利用できる店舗もかなり増えてきました。
例えば、スーパーマーケット。
以前はキャッシュレス決済に対応していないスーパーがあってもそれほど珍しくありませんでしたが、今ではほとんどのスーパーがキャッシュレス決済を導入しています。
飲食店やコンビニでも様々なキャッシュレス決済に対応しています。
上記の画像からもわかるように、コロナ禍の影響で人々の決済手段は現金からキャッシュレス決済へ移行しています。
以前よりもキャッシュレス決済の利用者が増え、キャッシュレス決済が当たり前の社会になりつつあるといえるのではないでしょうか。
キャッシュレス決済は種類が豊富
キャッシュレス決済と一言で言っても、カード型電子マネーやQRコード決済、スマホ決済、プリペイドカードやデビットカード、クレジットカードなど様々な種類があります。
スマホ決済やQRコード決済は、高齢者には少し難しいかもしれません。
しかし、カード型電子マネーやプリペイドカードならレジで「カードを出すだけ」なので高齢者でもわかりやすいはずです。
カード型キャッシュレス決済のメリット
- あらかじめチャージして使うものなので、家族が金銭の出納管理をしやすい
- チャージ金額の範囲内でしか買い物ができないので、同じものを何回も購入するといった浪費の心配もない
- 最悪、紛失しても損失を最小限に抑えられる
- レジで計算する必要がない
- レジで小銭を探す手間が省ける
上記以外にも「詐欺や盗難のリスクが大幅に減る」ということも考えられます。
クレジットカードは危険
クレジットカードはリボ払いや分割払いもできることがメリットでもあると同時に、金銭の管理が苦手な高齢者にとっては大きなデメリットとなります。
また、限度額も高額なので無駄遣いをしたり、詐欺や盗難の被害に遭いやすくなります。
高齢者が使うという目的ではクレジットカードは避けた方が無難です。
家族や介護者がサポートする
プリペイドカードや電子マネーのチャージ方法は、カードごとに違ったりして少し複雑だったりするので、家族や事業所などがサポートする必要はあります。
高齢者の子供にあたる世代の50代〜60代でもキャッシュレス決済を利用している人は多く理解も深いので十分サポートは可能でしょう。
引用:楽天インサイト
上記の画像からは、20代〜40代を中心に全世代でキャッシュレス決済を支持する人が過半数を超えていることがわかります。
それだけ、世代を問わず社会全体がキャッシュレス決済を理解してきたということになります。
高齢者に最適なキャッシュレス決済とは?
ここまでの内容を踏まえると、高齢者が利用しやすいキャッシュレス決済としては「カード型電子マネー(オートチャージ機能はなし)」「プリペイドカード」の2つがお勧めです。
プリペイドカードを選ぶときは、ドコモやソフトバンク、auといった3大キャリアが発行するクレジットカードに対応したプリペイドカードにすれば、家族が使っているキャリアに合わせて使うとポイントもたまりやすくてお得です。
カード型電子マネーであれば、シェア1位の「楽天Edy」が使える店舗も多くてお勧めです。(参考:Wikipedia)
「Suica」は交通機関はもちろん自販機やコンビニなど使える場所が多いし、バスを利用することが多いなら便利な電子マネーですが、交通機関でも使えるので認知症で徘徊の可能性がある高齢者には不向きです。
「nanaco」はイトーヨーカドーやセブンイレブンが近所にあるなら使い勝手がいいかもしれませんね。
カード型電子マネーを選ぶ際に最も大切なことは「生活圏内でよく利用する店舗に合わせて選ぶ」ということです。
オートチャージ機能付き電子マネーには要注意
電子マネーを利用する際にはオートチャージ機能は使わないようにしましょう。
クレジットカードと連携してオートチャージが可能になると、チャージ残高が不足すれば自動でチャージされてしまい、クレジットカードを持っているのと変わらなくなります。
浪費や盗難などのリスクが大きくなるので要注意です。
ただ、オートチャージ機能には連携するためのクレジットカードが必要になるので、ほとんどの電子マネーは最初から自動でオートチャージ機能が有効になっていません。
つまり、既にオートチャージ機能を有効にしている場合でなければ、特に何もしなくてもオートチャージ機能は使えないので、高齢者でも安心して使えますよ。
地域社会の理解も必要不可欠
しかしながら、キャッシュレス決済に慣れるまではイレギュラーな事態が起きないとも言い切れません。
例えば、もしチャージのし忘れなどで金額が足りなくなってしまえば決済できなくて高齢者では対応できないかもしれません。
また、カードを読み取るカードリーダーの場所がわからないかもしれません。
そういったときに丁寧に説明してくれる店員さんがいれば、高齢者も安心できるでしょう。
それにもし、複数枚のカードを持っていたら、どのカードを使えばいいのかわからなくなるかもしれません。
そんな時にも店員さんの対応が必要になるし、そもそも高齢者には、よく利用する店舗に対応したカードを1枚だけ持たせるといった家族の配慮が必要になってきます。
当然、高齢者が安心して買い物ができるような環境を、地域社会で整えていくことは重要になってきます。
まとめ
キャッシュレス決済には主に「クレジットカード」「デビットカード」「電子マネー」「QRコード」の4種類があり、その精算方法は「前払い」「即時払い」「後払い」の3種類があります。
様々なキャッシュレス決済の種類がありますが、高齢者には「カード型電子マネー(オートチャージ機能はなし)」と「プリペイドカード」の2種類がお勧めです。
コロナ禍の影響もあり、キャッシュレス決済が急速に社会に浸透して、以前に比べると対応している店舗もかなり増えてきたので、高齢者でもキャッシュレス決済が使いやすい世の中になってきています。
そして、これからもキャッシュレス決済はもっと普及していくことが予想されるので、高齢者がキャッシュレス決済を使うことがそれほど珍しくない、ということになっていくのではないでしょうか。
我々が日常的に難なく行える「買い物」も、年齢を重ねるにつれ難しい行為となっていきます。
我々が買い物をすべて代行してしまえば簡単に思えるかもしれませんが、それでは高齢者にとって自立した生活とはいえません。
家の外に出て、お店で買い物をすることは楽しみでもあり、気分転換にもなります。
また、歩くという運動をすることにもなるので足腰の筋力低下を防ぐこともできます。
これらの理由からも無理をしない範囲で、できる限り自分で買い物をしてもらうということは、高齢者のQOLの向上にもつながり、介護の基本的な理念でもある「自立支援」の観点からも非常に大切なことです。
難しくなってきた「お金の支払い」がキャッシュレス決済という社会資源によって少しでも簡略化できれば、高齢者にとっての「社会参加」が促進されることになります。
我々がサポートしながら高齢者が生活しやすい社会を築いていくことは、現在の高齢者のためであるのはもちろん、将来の我々が生きやすい社会を作っていくことにもなります。
まずは身近なところから「高齢者でも買い物がしやすい社会」が実現したら嬉しいですね。
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