僕は以前、住宅の新築からリフォームまで施工する会社で営業の仕事をしていました。
役職にも就いて給料もそこそこ貰っていましたが、経営不振による倒産で突然職を失うことに・・・
そこから180°方向転換をして38歳の時に介護業界に転職したのですが、アラフォーで新しいことを始めるのは簡単ではありません。
しかし、ミドル世代の転職組でも介護業界に馴染みやすくなる、ちょっとしたコツみたいなものがあります。
そこで、僕が介護に転職した頃に気をつけていたことについてお話ししていきますので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
介護へ転職した時に心がけたこと
僕は元々、育児や家事をするのが嫌いな方ではありませんでした。
それでも介護職へ転職した時には、洗い物や洗濯、さらにはオムツ交換やシーツ交換などの業務に随分違和感を感じたものです。
アラフォーが介護に転職すると、たくさんの壁が立ちはだかっています。
環境の壁、年齢の壁、給料の壁、業務内容の壁、人間関係の壁。
僕が、これらの壁を乗り越えるために意識したことは、たった4つ。
- とにかく2週間は全力で
- 最初から上手くやれる人なんていない
- 年齢は一切関係ない
- 介護を始めた理由を忘れない
これらは転職したあと実際に働いてみて辛くなった時に、あなたを助けてくれるキーワードになってくれるはずです。
では、一つずつ説明していきます。
とにかく2週間は全力で
第一印象というものは、あなたが想像している以上に影響が大きいものです。
転職してきた新人職員が仕事ができるかできないかは初日の印象で、ほぼ決まってしまいます。
我々、介護職員はコミュニケーションのプロフェッショナルです。
新人職員の表情や行動から、様々な情報を読み取ることができます。
認知症相手ならともかく健常者相手なら、その判断はほぼ外れることがありません。
「第一印象と違った!」と良い意味で裏切られたパターンの方が少ないです。
現場で何度も指導をしてきたリーダーやベテラン介護士にとって「第一印象」というのは、その人を判断する際に非常に重要なものだといえます。
一度失った信頼を取り戻すのが如何に大変なのかは、社会人としての経験が豊富なあなたであれば想像に難くないでしょう。
つまり、逆に言えば、最初だけ全力で頑張っておけば「この人は仕事ができる。見込みがある。」という印象を与えることができるので、今後がグッと楽になるんです。
例えば、コーヒーが好きな利用者にお茶を出してしまったとしましょう。
大したミスではないのに、仕事ができない人がやると「ちゃんとしてよ!」などと怒られたりします。
しかし、仕事ができる人がやると「たまにはそんなこともあるよ」で済むものです。
介護以外の業界でも似たようなことありませんか?
理不尽なようですが、社会なんてそんなものです。
「仕事ができる」というイメージや先入観というのは「仕事をしやすい環境」を構築していく上で、最も重要視すべきファクターと言っても過言ではありません。
「この人は仕事ができる人だ」というブランディングをするために、ずっと全力で頑張りつづけることは体調不良を引き起こすことにも繋がり、現実的に見ても無理があります。
挙げ句の果てに、体調を崩して「よく休む人」と思われてしまっては本末転倒です。
そうならないためにも、ゴールを決めておくのをおすすめします。
どれくらいの期限を設定するのかは個人差があると思いますが、個人的には1ヶ月は少しきついし、1週間では印象付けするには短い気がするので、真ん中をとって2週間くらいが丁度良いのではないかと思っています。
2種間といっても14日間ぶっ続けで出勤することなんてありえませんし、介護の仕事はシフト制で2〜4日くらいで休みが入ることが多いので、それほどきついとは感じないはずです。
正直、我々ミドル世代ともなると若い頃のようにはいかないもので、物覚えも悪くなってきています・・・笑
仕事を早く覚えようという気持ちがあれば言われなくてもメモは取るだろうし、わからないことがあれば率先して聞いてまわるくらいのことはするはずです。
そんな日々を過ごしていたら2週間なんて、あっという間。
そして、2週間後には周りはあなたの「意欲」を評価してくれます。
ちなみにこの2週間ルールは、転職したときだけでなくユニット異動の時にも幾度となく僕を救ってくれているので、効果は実証済みです。
まずは2週間だけ「1日でも早く仕事を覚えてやる!」という気合いで乗り切ってください。
最初から上手くやれる人なんていない
介護の世界では、短期間で転職を繰り返す介護士も少なくありません。
何年も介護の経験があるというプライドが邪魔をして、新しい職場でわからないことも多いはずなのに「大丈夫です」「わかりますから」と、教える人の言葉を遮って聞く耳をもたないような介護士も実際にいます。
もちろん、そんな人は職場に馴染むこともできずにすぐに辞めて、また他の施設へ転職することになるのですが・・・
オムツ交換やトランスなど、介助技術の面で言えば、業務内容は職場によって大きな変化はないかもしれませんが、新しい職場で新しい利用者に対応するというのに全てわかるなんてことはありえません。
つまり介護の経験があっても、新しい職場では1から仕事を覚えることになります。
介護の未経験者なら、0からのスタートです。
当然、現在介護の仕事を始めて7年目の僕も7年前は0からスタートしました。
10年選手のベテラン介護士でも、10年前は0からのスタートです。
全く新しい仕事をするのに最初から完璧にこなせる人なんて存在するわけがないんです。
それは現場で指導にあたるリーダーや先輩介護士も十分理解していることなので、最初から何年も働いている職員のような動きを期待してはいません。
もし万が一、そんなことも理解できていないような施設だったら、とっとと辞めて別の施設へ転職することをおすすめします。
介護の仕事へ転職して未経験から始める時、最初のうちは利用者とお話ししながら顔と名前を覚えたり、お茶出しや食事の配膳下膳など「それくらいできるから」と思ってしまうような簡単に見える仕事ばかりかもしれません。
しかし、「それくらい」と思えることでも、利用者の顔と名前がしっかり把握できていなければ薬を間違えて飲ませてしまうリスクもあるし、配膳やお茶出しも適当にやってトロミをつけ忘れたら誤嚥の原因になり誤嚥性肺炎や、最悪の場合は食べ物を詰まらせて死亡といったリスクも考えられます。
実際に、施設でパンを詰まらせて亡くなられた方もいらっしゃいます。
今まで社会人として何十年も経験を積んできたという自信は持ち続けるべきですが、「それくらいできるから」という根拠のない自信は、介護現場では必要ありません。
介護は利用者の命を預かる仕事だと気を引き締めて、一つずつ「確実に」覚えていくことが大切です。
それこそが、介護の仕事は誰でも最初から上手くやれるわけがない根拠です。
年齢は一切関係ない
現場には、年齢も性別も様々な職員がいます。
介護は中途採用の転職組も多い業界ですので、キャリアと年齢は比例しないことが多いです。
つまり、年下の女性リーダーが年上の男性新人職員の教育をするのも、日常茶飯事というわけです。
指導にあたるリーダーや中堅職員はもちろん、転職してきた全ての職員がそうやって指導されてきたので、あなただけが変なプライドで新人らしからぬ態度をとっていると、周りにはただ「態度のでかい常識のない人」としか思われません。
前職で役職に就いていた人も、飲食店のオーナーだった人も、新しい仕事、新しい職場に入れば、当然誰でも新人です。
とはいえ、特に男性なら今まで社会で揉まれてやっと築き上げてきたものを全て捨てて0からやれ!と言われても、複雑な心境になるのはよくわかります。
もちろん、僕も最初の数日は葛藤していました。
しかし、転職しても今まで築き上げてきた社会経験は全て無駄にはなりません。
むしろ、長年の社会経験は、介護の仕事をするうえで必要不可欠なスキルです。
年齢や性別問わず、介護の現場に長く居る人の意見やアドバイスを、自分の中へ素直に落とし込むために、今まで培ってきた社会経験のスキルを活かしましょう。
知らないことを知ったかぶりする人より「教えてください」「ありがとうございます」と素直に言える人の方が、圧倒的に「大人」に見えることは、社会経験豊富なあなたなら想像に難くないはずです。
そもそも、知ったかぶりしてわからないままだと、後になって大きなミスや事故に繋がる可能性も十分にあります。
そうならないためにも無駄なプライドは捨てて、あなたのために、利用者のために、わからないことはわからないままにしないで、リーダーや先輩職員にどんどん聞いていきましょう。
「仕事を早く覚えて戦力になりたいです!」というアピールにもなります。
積極的に聞いてくる新人職員の方が、こちらから言わないと何も聞いてこない新人職員よりも好印象をもってもらえますので遠慮はいりませんよ。
介護を始めた理由を忘れない
あなたはなぜ介護を始めようと思いましたか?
僕の場合は、前職の会社が倒産目前で給料未払いが続き、38歳の時に仕事を失うことになり人間不信ならぬ会社不信に陥ったところで、資格と経験さえあれば職を失うことはない介護への転職に興味をもちました。
それに今後、高齢化がどんどん進むのは明らかで、介護の仕事を自ら辞めない限り失業する心配は一切ありません。
40手前で失業して、次また50で失業なんかしようものなら、そこからまた転職なんてほぼ不可能です。
失敗は許されない転職活動で、介護業界に「安定」を見出したわけです。
そしてもうひとつ、介護への転職の背中を押したのは、僕が30歳頃に亡くした両親への思いでした。
母は膀胱ガンで50歳で他界、その3年後には後を追うように父も病死。
若い頃の僕はバンド一筋で、親には散々迷惑をかけてきました。
そして今、8歳、5歳、3歳の子供がいますが、子供が好きだった両親に孫の顔を見せてやれなかったのは未だに後悔しています。
全く親孝行できなかったことは、これからもずっと後悔していくことでしょう。
そんな思いを少しでも払拭できれば、
自分の親にしてやれなかった親孝行のつもりで高齢者の役に立つことができれば、
というつもりで介護への転職を決めました。
実際、介護の現場に入ってみると、皆さん色々な思いを持って介護の仕事をしています。
「お母さんが、おばあちゃんの介護をしているのを見てきたから」
「妹が障害者だから」
「親も介護の仕事をしていて、その姿をずっと見てきたから」
等、介護業界で長続きしている人の大半は、何かしらの思いをもっている人たちです。
裏を返せば、介護の仕事をすぐ辞めていってしまう人は「なんとなくやってみようと思ったから」といった感じの人が多い気がします。
というのも、介護の仕事は一日中動き回るので体力的にも負担が大きく、認知症の対応も慣れていなければ精神的にもきつい仕事だからです。
爺さん婆さんの下の世話もしなきゃいけないし、夜勤は体調も崩しやすくなります。
介護は「爺さん婆さんのお話相手」をするだけの仕事ではないんですが「なんとなくハローワークに勧められたから」といった人たちには、誰でもできる簡単な仕事だと思って転職してくる人も一定数います。
そんな人は、数日で辞めてしまうこともよくあることです。
つまり、体力的にも精神的にもきつい介護の仕事を何年も続けていられるのは、やはり「介護の仕事がしたい」という明確な意思によるものだといえます。
もし、あなたが介護の仕事でこれから頑張っていきたいと思っているのなら、今あなたが「介護がやりたい」と思ったきっかけを忘れないようにしてください。
今後、介護の仕事が辛くなるときが必ずやってきますが、それでも介護を続けていける原動力になってくれるはずです。
そして、あなたも含めた我々ミドル世代が介護業界を牽引して、今までもこれからも介護職員は「介護がやりたい」と思っている人の集団であってほしいと願います。
ミドル世代だからこそできることはたくさんある
今まで社会で揉まれながら、豊富な社会経験を積んできたミドル世代が「新人」として介護業界で仕事を始めていくためには、以下の4つを念頭に置いておくことをお勧めします。
- とにかく2週間は全力で
- 最初から上手くやれる人なんていない
- 年齢は一切関係ない
- 介護を始めた理由を忘れない
今まで部下を率いてバリバリ仕事をしていたミドル世代が、転職して0からのスタートとして新しい仕事を始めることは簡単ではありません。
しかし、好都合なことに介護業界は中途採用での転職が非常に多い業界なので、現場で働く職員はミドル世代の転職でも変に意識することなく、丁寧に仕事を教えるつもりでいるし、ましてや下に見ることなんてありません。
受け入れ態勢は整っています。
覚えることはたくさんありますが、素直に聞く姿勢、教えてもらう姿勢で臨めば、仕事を覚えることもそれほど難しくはないでしょう。
年齢や性別を意識した無駄なプライドこそが、仕事を覚えて介護士として成長していくことを阻害します。
今まで前職の会社に貢献してきたあなたの実力があれば、介護業界でもうまくやっていけますので安心してください。
また我々、社会経験豊富なミドル世代は即戦力として、利用者の思いやニーズをいち早く捉えることができるのも大きな強みです。
長年培ってきた経験が全く無駄にならないのも介護の仕事の良いところです。
若い世代にはない経験と感覚は、ミドル世代ならではの武器といえるでしょう。
そして、その武器は介護の現場で様々な形で応用できます。
ミドル世代は、介護の仕事に必要なものの多くは既に標準装備しています。
あと必要なものは、介護をやりたいと強く思う気持ちだけ。
綺麗事ではなく、2025年も控えたこれからの介護を引っ張っていくのは我々ミドル世代だと思っています。
なぜなら、2025年に後期高齢者になる団塊の世代は、団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアとも呼ばれる我々ミドル世代の親にあたる世代だからです。
自らの親と同じ世代の利用者の思いを汲み取ることができるのは、ミドル世代特有のスキルともいえます。
我々しかない強みを最大限に発揮して、これからの介護業界を共に背負っていきましょう。
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