ユニット型特養での夜勤|業務内容を全て明かします。

ユニット型特養での夜勤|業務内容を現役介護士が全て明かします。

施設での介護の仕事には夜勤がつきものですが、今まで夜勤をやったことがない人からしたら不安ですよね?

しかし、排泄介助や体位交換、巡視や記録さえしっかりやっておけば、ほとんどの場合は無事に夜勤が終わります。

ユニット型や従来型、特養や老健などの業務形態の違いによっても、夜勤の人数や内容は変わってきますが、今回はよりリアルな情報をお伝えできるよう、僕が現在勤務している特養(ユニット型)での夜勤の実態について赤裸々に解説していきます。

ユニット型特養に就職したい、今は別の施設に勤めているけどユニット型特養の夜勤ってどんな感じなのか知りたいと思っている方は是非参考にしてください。

目次

ユニット型特養の夜勤業務の内容

まずユニット型特養における夜勤の概要について説明します。

  • 夕食介助
  • 就寝介助
  • 巡視
  • 排泄介助
  • 体位交換
  • ナースコールや眠れない利用者への対応
  • 記録
  • 起床介助
  • 朝食介助

上記以外にも、バイタル測定をしたりゴミ捨てや物品補充などの細かい雑務があります。

僕の勤めるユニット型特養では準夜勤がないので、夜勤者は2ユニット20人の利用者を一人で見ることになります。

全部で10ユニットある施設なので施設全体で夜勤者は5名勤務していることになりますが、2ユニットごとに完全に仕切られており、利用者の急変時など特別な理由がない限り、原則的に他のユニットの夜勤者と協力することはありません。

また、特養では看護師が夜間に常駐することはなく、急変時はオンコール(電話)で指示を仰ぐことになります。

看護師到着までの対応は、介護職がやらなければいけないので、夜勤は結構神経をすり減らすことになります。

そんなプレッシャーに耐えられないという理由から夜勤をやりたくないという職員もいるくらいです。

では、一人で判断し一人で対応しなければならない夜勤の時間はどれくらいあるのでしょうか?

勤務時間は?

僕が勤める施設では、夜勤の勤務時間は16時30分〜翌9時30分となっています。

拘束時間は17時間、休憩時間を1時間として8時間勤務が2日分の勤務時間です。

夜勤入りで1日、明けで1日という考え方ですね。

明けの翌日は必ず休日となり「入り→明け→公休」が1セットとなっています。

出勤したらまず申し送り

出勤したらユニットに入る前に医務室で看護師から申し送りがあります。

  • 日中に転倒や熱発した利用者がいる
  • 予防接種があった
  • 翌日の受診予定や入院、退院に関すること
  • 未排便者がいれば下剤の指示
  • 特に状態が悪い利用者がいれば、より綿密に打ち合わせ

夜勤中は看護師がいなくなるので、確認しておきたいことは申し送りの時点でしっかり聞いておきます。

申し送りが終わると、夕食〜翌日分の薬を受け取ってユニットへ入ります。

孤独な夜勤の始まり

ユニットに入るとまず、先ほど看護師から受け取ってきた薬を指定の場所へ保管します。

薬の準備が終わると、次は夜間帯で使用する記録物の準備をします。

介護業界は未だに手書きが普通?!

介護業界でのICT化はかなり遅れており、手書きで記録している施設も多いのが現状です。
しかし、昨今の新型ウイルス感染拡大の影響で新しい生活様式が唱えられるようになり、令和3年度の介護報酬改定に向けてICTを活用した介護現場の革新が検討されています。

参考:NDソフトウェア株式会社『介護記録のICT化推進?内閣府の経済財政諮問会議について解説

僕の勤める特養でも記録が手書きです…。

一通り準備が終われば、いよいよ一人夜勤の始まりです。

1.夕食介助

夕食の介助をします。

ただし、看護師は18時に退勤するので普段と違うことがあったら早めに指示を仰ぐなどの対応が必要です。

夕食が終われば口腔ケアをします。

2.就寝介助

我々も夜寝る前には色々と支度しますよね。

利用者も我々同様、歯磨きをして、パジャマに着替え、トイレに行ってから寝ます。

ただし、更衣については無理をしてまで行うものではないと考えられています。

拘縮やまひ、皮膚が弱く剥離しやすい利用者などは更衣の回数が多いほどケガのリスクが高くなるので、ユニットで話し合って更衣が必要なのか避けた方が良いのかを判断する必要があります。

また、夕食後には日勤者も退勤するため、就寝介助の時間は遅番と夜勤者の2名で20名の利用者を更衣するのは現実的に不可能です。

介護者の都合ですので本来は正しいとはいえませんが、慢性的な職員不足を改善しない限り、全ての利用者に行き届いたケアというのは難しいのが現実です。

利用者本人や家族の希望がある場合に更衣を行います。

3.巡視

利用者が就寝したあとは、2時間ごとに巡視を行います。

巡視では、利用者を起こさないよう顔色や呼吸状態を確認します。

ベッドから転落や転倒していたり、ろう便していたりと様々な状況に出くわす可能性もあるので、巡視の時間はヒヤヒヤものです。

もし、心肺停止を発見したら、施設のマニュアルに従い落ち着いて行動しましょう。

ちなみに、僕は今までに自分のユニットで1件、他ユニットの応援で2件の心肺停止に遭遇しました。

7年で心肺停止に遭遇したことが3件なので確率的には低いといえますが、高齢者はいつ何があってもおかしくない「爆弾」を抱えた人が多いので油断は禁物です。

もし、巡視をサボって利用者が亡くなっていたことに遅れて気づいた場合は、死亡推定時刻から業務怠慢がバレて相当の責任を取らされることになります。

人生を棒に振らないためにも、巡視だけは何があってもきっちりやっておくことを強くお勧めします。

4.排泄介助

排泄介助の時間は、施設やユニットごとでも変わってきます。

利用者の状態や、オムツの人数などで排泄介助にかかる時間も違います。

僕のユニットは、重度の利用者が多いので20人中15人がオムツです。

日中は手分けしてできたオムツ交換も、夜間は一人で全部やることになるのでなかなか体力を使います。

オムツ交換が多いと一度の排泄介助が大変ですが、ナースコールによるトイレ誘導が少ないので待機時間が楽になるメリットがあったりします。

反対にオムツ交換が少ないユニットでは定時の排泄介助はそれほど体力を使いませんが、トイレ誘導や失禁、放尿や放便などでバタバタすることも。

僕のユニットでの定時の排泄介助は、23時、1時、3時、5時になっています。

ただし、夜間の定時介助は利用者の睡眠の質を下げる可能性が示唆されており、可能な限り最小限の回数で介助できるように工夫しようという動きも活発になってきました。

5.体位交換(体位変換)

自分で寝返りができない利用者は、褥瘡予防のために2時間ごとに体位を変えます。

しかし、体位交換も先述の排泄介助同様、2時間ごとに布団を剥がされコロコロされていては、利用者にとって苦痛になる可能性もあります。

日本褥瘡学会のガイドラインは2009年のものであり、日本褥瘡学会が参考にした研究も2001年のものですので、20年近く前のデータを参考にした10年以上前のガイドラインということになります。

近年ではマットレスも高機能なものが増えており、必ずしも「2時間」である必要はありません。

自動で体位交換をしてくれるエアーマットなどもあります。

こういったハード面での見直しは、慢性的な介護士不足問題の解決にもつながります。

もちろんハードを用意するのは事業所なので、我々介護士でどうこうなる問題ではないかもしれませんが、介護業界全体でもっと利用者の睡眠の質を向上させる動きがあってもいいのではないかと思っています。

6.ナースコールや眠れない利用者への対応

夜勤業務のなかで、おそらく一番辛いのがこれかもしれません。(笑)

認知症の利用者は、何か気になることがあるとナースコールを何度も鳴らすことがあります。

また、一晩中起きている利用者がいたり、徘徊を始める利用者がいたりと、様々な状況に対応しなければいけません。

不穏やトイレの訴えなども1件ずつ来てくれればまだ処理できますが、これがよく被る!なぜかよく被る!(笑)

同時に3つも4つもナースコールやセンサーコールが鳴ると、一人では全てに対応するのは物理的に不可能です。

それでも、瞬時に優先順位を決めて、なるべく転倒などの事故が起きないように対応することが求められます。

7.記録

夜間の排泄を記録したり、夜間の状況などを記録します。

先述のような不穏があれば、その都度記録したり、新規入所者や状態の良くない利用者がいれば巡視ごとの状況も詳しく記録していきます。

もし転倒などの事故があれば、事故報告書を書くことも。

僕が勤める施設では事故や急変がなければ、朝6時に1回だけ記録を書くことになっています。

しかし、1回だけとはいえ20人分を手書きで書くとなると30分くらいはかかります。

しかも、介護日誌や個人記録、食事量や排泄の記録などフォーマットは複数あり、時には同じことを複数の書類に記録することもあったりと、手書きの記録は無駄な作業でしかありません。

記録の電子化推進は、ただでさえ職員が不足している介護業界では優先的に改善されるべき事項ですね。

8.起床介助

朝5時の排泄介助が終わると、順番に起床の介助に入ります。

介助内容は利用者に応じて様々ですが、主に自ら起きることができない利用者の移乗をしたり、洗顔や整髪といった整容の介助、パジャマから洋服への更衣などがあります。

また、起きたあとの寝具を整えたり、フロアに出てきた利用者へお茶を出したりを一人で行うので忙しい時間帯です。

バタバタしているせいで、全ての利用者を把握することができずに転倒事故が起きやすい時間でもあります。

利用者の状態をしっかり把握して事故が起きないように優先順位をつけて、うまく段取りすることが必要になってきます。

僕は先にやれることは先に片付けておいて、精神的にも時間的にも余裕がある状態を維持するようにしています。

9.朝食介助

早番が出勤してきたら、2人介助の利用者を離床介助したり、朝のバイタル測定を行います。

1ユニットを1人ずつで分担して介助するので、日中より人手が少なく、夜勤明けの体力もそろそろピークを迎えている頃なので、通常の食事介助よりも大変だったりします。

食介しながらウトウトして一瞬意識が飛ぶ…なんてことも。

判断力がかなり鈍っているので、配膳ミスや誤薬などの事故が多いのも朝食時です。

可能な限り、夜勤明けのフォローができるように、朝食時には3人体制にするなど、シフトを工夫するのが望ましいですね。

魔の朝食時間が無事終われば、日勤も出勤してきて人も増え、明けは朝礼や申し送りをしたり、ゴミ捨てやパット類の補充など後片付けをしたら、9時半には晴れて家に帰れます。

しかし、人が少ない施設では残業を強いられることもあるようです。

夜勤明けの残業ほどキツイものはないので、面接時に確認しておきたいところですね。

ユニット型特養の夜勤業務に休憩はあるの?

ここまでの夜勤の主な流れを見ていると、気になるのが休憩時間のことでしょう。

勤務時間の説明でも触れましたが、夜勤業務には1時間の休憩時間があります。

しかし、夜勤には1時間分の残業手当が支給されます。

一人夜勤に「休憩時間」という概念は存在しない

ユニット型特養では一人夜勤のところも多いですが、一人で夜勤業務をやっている以上、○時〜○時までといった「まとまった休憩時間」はありません。

というか、現実的にまとまった休憩時間はとれません。

しかし、こればかりは施設やユニットで当たり外れがあります。

寝たきりの利用者が多ければ、ナースコールや徘徊もなく時間になればオムツ交換や体位交換、巡視をすればいいので、待機時間が多く休憩時間もとりやすいです。

しかし、徘徊や不眠などが多いユニットでは、いつ利用者の対応をしなければわからないので、隙間時間で休憩するしかありません。

準夜勤がいて複数人で夜勤業務をやる場合は交代で休憩や仮眠がとれますが、一人で夜勤業務をやる場合、休憩時間ですら自分で考えて段取りしながら作り出さないといけません。

仮眠する?しない?

個人差もあり、実際に一睡もしないまま夜勤を乗り切る職員もいますが、どんなに夜強いから大丈夫!と思っていても人間である以上、睡眠をまったく取らないと脳の働きが鈍くなります。

一睡もしないより小一時間程度は仮眠をとっておいた方が圧倒的に仕事の効率が上がるのは科学的に見ても当然のことです。(参考:https://www.kango-roo.com/lifestyle/4861/

特に夜勤に慣れないうちは明け方の睡魔に勝てないので、ぼーっとしたまま仕事をしていると、先述したような誤薬やトランスの際に利用者にケガをさせたりといった思いがけない事故につながります。

それに、帰りの運転で事故を起こした職員も見てきました。

一人夜勤でも巡視や排泄介助の合間をみて、小一時間くらいであれば仮眠も可能です。

現場では「寝るのが悪」みたいなことを言う人もいますが、くれぐれも無理は禁物です。

また、夜勤中はもちろん、夜勤前後の仮眠の取り方を工夫すれば1時間仮眠できれば、ある程度睡眠の効果が得られます。

段取りを上手く考えて、なるべく1時間でも仮眠できるようにしましょう。

そもそも一人で夜勤ってやってもいいの?

厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準 (厚生省告示第29号)によると、特養では入居者25人につき1人の職員と定められています。

ユニット型特養では1ユニット10名の利用者なので、2ユニット20名までなら1人の職員で夜勤業務を行っても法的に問題はありません。

正直ミドル世代に一人夜勤の業務内容はキツい!

ここまで夜勤は大変という内容を書いてきましたが、その通り我々アラフォーを中心とした、いわゆるミドル世代にとって夜勤業務はなかなか厳しいものがあります。

それでも働き盛りでもあるミドル世代は、夜勤をやらざるを得ません。

ミドル世代でも夜勤をこなすためには、それなりの原動力が必要です。

やっぱりお金のため

施設で夜勤手当は変わってきますが、僕の勤める施設では夜勤1回で約1万円ほどの手当がつきます。

月に夜勤を5回程度やってようやく手取り25万円くらいになります。

つまり夜勤をやらないと20万いくかいかないかの給料ということです。

ミドル世代は家族を支えている人も多く、やはり生活のために収入を増やす努力は必要になってきますよね。

家族のため!お金のため!と思えば、夜勤も頑張れるもんです。(笑)

健康管理を徹底する

ミドル世代が夜勤をやるためには、今まで以上に健康を意識することが重要です。

多少の慣れもありますが、夜勤前はもちろん夜勤中や夜勤明けの過ごし方を工夫すれば、アラフォー以上の年代でも夜勤の負担が軽減します。

睡眠は時間だけではなく質が重要とされているので、質の良い睡眠がとれる時間を狙ってうまく仮眠をとることで効率よく睡眠がとれます。

また、睡眠の次に重要なのが食事です。

夜勤前後はもちろん、日頃からジャンキーな食べ物はなるべく避けて、野菜を多く摂るように意識することも大切です。

かくいう僕も以前は何も考えずに好きなように好きなものを食べている時期がありました。

不摂生やストレス、不規則な生活のせいで原因不明の高熱を出して3回も入退院を繰り返したこともあります。

健康の大切さを思い知らされてからは、ストレスにならない程度に健康に気を遣っています。

シフトワーカーは死亡率が高いというエビデンスもあるので、夜勤をやる人はより健康に気をつける生活をしなければいけません。(参考:https://www.asahi.com/articles/ASKBK5S15KBKPLBJ002.html)

「睡眠、食事、運動」の三本柱を少し意識するだけでも、全く気にしない生活に比べれば健康な体づくりができます。

家族を養うためにも、あなた自身が豊かな生活を送るためにも、全ては体が資本です。

夜勤前後の過ごし方について、もっと詳しく知りたい方は以下の記事がオススメです。

どうしても夜勤が無理だと感じたら

健康に気をつけて色々努力しても、どうしても夜勤が辛いと思う人もいると思います。

そんな時は、デイサービスなどの夜勤がない職種を選んだり、特養でも日勤だけの限定常勤という雇用形態があったりするので変更できないか職場に相談してみたり、夜勤をやらないという選択肢もあります。

こればかりは個人差もあるので、無理に夜勤をやる必要はありません。

もちろん夜勤をやらないと給料が・・・という気持ちもわかりますが、無理をして夜勤をやったところで、あなたの精神や身体のためにならないだけでなく、利用者のためにもならないので、すっぱり方向転換した方が賢明です。

というのも、ギリギリの状態で夜勤をやると精神状態にも余裕がなくなり、普段なら上手く流せるような些細なことでもイライラしたりして最悪の場合、虐待につながる可能性が多いにあるからです。

虐待に至るようなことになってしまっては、利用者やその家族は当然傷つき、もし訴訟に発展すれば、あなたの人生を棒に振ることになります。

訴訟関係なく、虐待をしてしまったとずっと後悔することになり、あなたの心も間違いなく傷つきます。

そうなる前に、英断する勇気も必要ですよ。

もし、事業所が夜勤ナシを認めてくれない場合は、転職を視野に入れるしかないですね。

自分で夜勤がない職場を探すのが大変だと感じる場合は、介護専門の転職支援サイトを利用するのもアリです。

無料で、あなたの代わりに夜勤がない求人を探してくれます。

転職支援サイトについて詳しく調べた記事もありますので、気になる方は参考にしてください。

ユニット型特養での夜勤業務に必要なものは「健康」

最後にユニット型特養での主な夜勤業務をおさらいしておきましょう。

  1. 夕食介助
  2. 就寝介助
  3. 巡視
  4. 排泄介助
  5. 体位交換
  6. ナースコールや眠れない利用者への対応
  7. 記録
  8. 起床介助
  9. 朝食介助

これら9つの業務を、たった一人でこなさなければなりません。

アラフォー以上の世代が一人で夜勤業務に臨むのは正直キツいですが、睡眠の取り方や食事などに気をつけて日頃から健康的な生活を送ることで、朝まで乗り切る体力をつけることも十分可能です。

また、夜勤中に1時間程度でも仮眠する時間を見つけることは、あなたの体のためにも事故のリスクを回避するためにも大切なことです。

働き盛りのミドル世代たるもの、家族を養うため、幸せな生活のためにお金を稼ぐことは大切ですが、それ以上に健康こそが本当に必要不可欠ですので、くれぐれも無理をしないようにしてください。

誰がなんと言おうと「体は資本」です。

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